セゾン投信と日本郵便の資本提携でファンドのコストは上がる?
2014/10/05
日本郵政グループの日本郵便が、バランス型ファンド「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」など2本の投信を提供する独立系投信会社「セゾン投信」に出資して、業務提携することになりました。
いままでセゾン投信の株式はクレディセゾンが100%を保有していましたが、今回の出資によってその比率は60%に下がり、残りの40%を日本郵便がにぎるというかたちになります。
日本郵便、クレディセゾン及びセゾン投信が連携して、若年層のお客さまを中心に投資信託の普及促進の取り組みとして、直販会社であるセゾン投信の投資信託の郵便局店頭等での広告宣伝(PR)活動、長期投資セミナーの郵便局等での開催を行います。
出典 : 日本郵便株式会社、株式会社クレディセゾン及びセゾン投信株式会社の資本・業務提携(PDF)
セゾン投信とは
セゾン投信とは「独立系投信会社」です。通常、投信というのは銀行、証券、郵便局などの窓口(販売会社)をとおして売買するものですが、独立系投信の場合、その販売会社をのぞいて、投資家と投信会社がダイレクトにむすびつくかたちになります。
直販投信のメリット
独立系投信は、その販売のかたちから「直販投信」とも呼ばれます。直販投信の大きなメリットは「手数料が安いこと」です。
投資家と投信会社のあいだに販売会社がはいると、その販売会社の取り分としてのコストがかかります。それは投信の「販売手数料」「信託報酬」などに反映されます。
資産運用においてコストをいかに安くおさえるかということは非常に大事ですが、その部分を考えたときには、一般的には直販投信のほうがほかの投信よりも有利です※。
また、金融機関をとおして売買するときには、長期保有ではなく短期での乗り換えが多くおこなわれやすくなります。金融機関には、販売手数料をかせぐために、投資家にひんぱんに乗り換えを勧誘しやすくなるインセンティブがはたらくからです。
投信はもともと長期保有が前提の商品ですが、こうした背景から金融機関(販売会社)をとおした投信の売買では短期的なものが多くなる傾向があります。
そのため、投信への投資における本来のかたちが保てるであろう、独立系投信会社への期待が高まっており、だんだんと独立系投信が増えたり、応援する投資家が増えたりしています。
※ 大手対面証券では販売手数料や信託報酬などのコストの高いファンドが多い印象がありますが、ネット証券ではノーロード投信(販売手数料が無料のファンド)を多く取り扱うところもあり、一概にどちらが良いとはいえません。
セゾン投信の2本のファンド
セゾン投信で現在運用されているファンドは世界の株式と債券に幅ひろく分散投資する「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」と、厳選した企業の株式へ投資する「セゾン資産形成の達人ファンド」の2本のみです。
どちらも販売手数料無料のノーロード投信であり、信託報酬が低く、リスク分散をしながら長期投資をしていくという特徴をもっています。
「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は2007年の日経優秀製品・サービス賞の最優秀賞(金融サービス賞)を、「セゾン資産形成の達人ファンド」はR&Iファンド大賞2014の最優秀ファンド賞(投資信託 NISA部門/バランス)を受賞しています。
投資家が気になるポイント「コスト上昇?」
セゾン投信の既存のファンド保有者、これから買付しようと考えている投資家にとって気になるのは、日本郵便の資本参加によって「郵便局での販売が開始されてコストが上がるのではないか」ということだと思います。
この点については、セゾン投信の中野晴啓社長のメール(および公式サイト)に答えがきちんと書いてありましたので、以下に抜粋します。
(前略)従って日本郵便は同社での販売を求めることも、手数料収入を期待することもなく、当社に対し引き続き直販にこだわって、2つのファンドを文字通り日本を代表する本格的長期投資ファンドとして成就させることを望んでおり(後略)
出典 : 日本郵便の資本参加について(PDF)
日本郵便がおこなうこととしては、冒頭に引用したとおり郵便局店頭での広告宣伝と、セミナー開催などにかぎられるとのこと。
日本を代表するような大企業が、独立系投信の理念と利益体質をきちんと理解したうえで、その妨げにならないようにサポートするというかたちで出資をするというのは、非常に熱くなる話だと思います。
業務提携の開始は2015年4月1日を予定しているとのことですが、今回の資本提携によってセゾン投信の純資産残高がいちだんと成長して、それによるコスト低減というかたちで、投資家も利益を得られると嬉しいですね。
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