毎月分配型のインフラ関連株投信がうりふたつ?
2014/10/10
少額投資非課税制度(日本版ISA=NISA)をおもに利用しているのは60歳代以上の高齢者です。その割合はなんと、約60%にのぼります。つぎに50歳代が16.6%、40歳代が12.7%とつづきます。
参考 : NISA投資額、3月末で1兆34億円 口座数650万
「貯蓄から投資へ」という流れの中で重要なポジションをしめるとされるNISAですが、まだまだ若者にはアピールできていません。しかし「貯蓄」の大部分は高齢者がもっていると考えられます。
そのため、高齢者がNISAを積極的に活用して、それが市場の活性化につながるのならば金融庁としてはとりあえずの目標がはたせるのかもしれません。
さて、高齢者といえばなにかと「分配金」が好きというイメージがあります。実際にそうなのかはわかりません。しかしNISAをつうじた投資額約1兆円のうち、6000億円以上をしめる投信。そのなかでとりわけ人気なのが「毎月分配型」の投信です。
2014年の上半期で、その毎月分配型投信のなかで最も人気が高かったのが「野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信(通貨選択型)米ドルコース(毎月分配型)」。上半期の資金流入額が4885億円というのだから驚きです。
野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信とは
野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信(通貨選択型)というのは、世界各国のインフラ関連企業の株式などをおもな投資対象とする投信です。
毎月分配型と年2回決算型のふたつにわかれており、それぞれ円コース、米ドルコース、豪ドルコース、ブラジルレアルコース、通貨セレクトコースの5種類と、さらに年2回決算型のマネープールファンドの合計11本で構成されています。
このうち大変な人気を得ている米ドルコース(毎月分配型)は、設定された2010年から2013年3月までは1万口あたりの分配金額は40円でしたが、その後150円、250円と金額を引き上げて人気銘柄となりました。
いまは販売再開されていますが、8月30日以降の買付申込みが一時停止されるということまで起こりました。
販売停止の理由
販売停止の理由は、設定時に決められていた運用資産の上限に純資産残高が近づいたというものでした。
投信には投資対象があり、その投資対象にはマーケットがあります。マーケットにはとうぜん市場規模というものがあり、投信による資金流入が大きくなると、マーケットの流動性などに影響をあたえるおそれがあります。
インフラ関連企業の株式の規模がどれほどあるのかわかりませんが、停止の際にはマネープールファンドをのぞく10本の純資産残高合計は1兆4000億円以上だったというのですからすごいですね。
野村高配当インフラ関連株ファンド(通貨選択型)
「野村ドイチェ・高配当インフラ関連株投信」は買付申込みを再開しましたが、今後も資金流入が続いたり、運用がうまくいったりなどの理由で純資産残高がまたいっぱいになる可能性もあります。
たとえ運用上限を引きあげたところで、上記の理由でまた買付申込み停止という事態は起こる可能性があります。しかし、ここまで人気のある金融商品があるなら、運用会社の野村アセットマネジメントとしてもただ見ているわけにはいきません。
そのような理由でつくられたのかわかりませんが、いま野村証券では「野村高配当インフラ関連株ファンド(通貨選択型)」という商品が新規募集されています。
各コースは、世界各国のインフラ関連企業(注1)の株式および米国の金融商品取引所に上場されているMLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)(注2)等を実質的な主要投資対象(注3)とし、信託財産の成長を図ることを目的として積極的な運用を行なうことを基本とします。
上記のような商品性の説明がありますが、ザッと確認したところ「ドイチェ・高配当インフラ」に内容がかなり似ています。
金融商品というのは当たりハズレがわからないものだと思うので、運用会社としてはドル箱商品があるのであれば、同じような商品性の金融商品をつくって新規募集をかけるというのはとうぜんの戦略なのかもしれません。
もちろん、組入れ銘柄がどのようになるのか、実際に「ドイチェ・高配当インフラ」と似たようなラインナップになるのかどうかはわからないし、分配金額も大きくなるのかは現時点ではわかりません。
しかし販売停止の際に、マーケットの流動性を考えて運用資産規模を適正範囲に維持するためという理由を公表していたのに、同じような投資対象の商品を設定するというのはどうなのでしょうか。とても矛盾を感じます。
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