野村ターゲットプライス「日経225」(愛称 : タッチ&スイッチ)の商品性
出典 : 野村證券の公式サイト
先日「野村時間分散投資『日経225・国内債券』」(限定追加型)というファンドを紹介しました。3年間、毎月すこしずつ債券を株式へうつしていくことで、ドル・コスト平均法をファンド内部で実現するというファンドです。
野村證券では同じ日に、もうひとつファンドを設定しています。それが「野村ターゲットプライス『日経225』」(国内債券運用移行型)です。
参考 : 野村ターゲットプライス「日経225」
このファンドは、組入れ商品は「野村時間分散投資」と同じ 2つのファンドですが、運用の手法が異なります。どういうファンドなのか、具体的に説明します。
ファンドの概要
「野村ターゲットプライス 日経225」(愛称 : タッチ&スイッチ)の商品構成はシンプルです。組入れ商品はおもに以下の 2つのファンドです。
- 野村日経225 マザーファンド
- 国内債券NOMURA-BPI総合 マザーファンド
この 2つのファンドは、「野村時間分散投資」の組入れ商品と同じものです。それぞれ、日経平均株価と国内債券市場全体の値動きに連動する成果をめざすインデックスファンドであり、ファミリーファンド方式で運用されます。
商品構成は同じですが、運用方法は異なります。
「野村時間分散投資」はだんだん株式の割合を高めていき、最終的にほぼ株式だけで運用されるというものでしたが、「野村ターゲットプライス 日経225」は最初からほぼ株式だけで運用されます。
そして基準価額が12,000円以上になったら速やかに国内債券への投資に切り替えられて、そのあとは安定的に運用されるというかたちです。
ファンドの手数料等
- 購入手数料
- 1.08%(税込)
- 信託報酬
- 0.54%/年(税込)
- 信託財産留保額
- 0.1%
- 設定日
- 2014年11月21日
- 信託期間
- 2020年12月18日まで
自分で運用するほうが良い?
「野村ターゲットプライス 日経225」はカンタンにいえば、最初は日経平均株価のインデックスファンドであり、基準価額が12,000円以上になったら国内債券クラスのインデックスファンドに替わる、という投資信託です。
自動的にスイッチされるので、ファンド保有者にとっては手間がかからないというのがメリットなのでしょうか。しかし、個人的にはメリットとは思えません。
「野村ターゲットプライス 日経225」を購入して信託報酬を支払うのではなく、もっと低コストのファンドで、自ら同じことをしたほうが良いでしょう。そのほうが安上がりです。
運用管理費用(信託報酬)が 0.54%というのは、一般的なインデックスファンドとくらべて高いとは言えません。しかし、もっと低コストのファンドはあります。
比較的高いコストを支払って、他人に株式から債券へのスイッチをおこなってもらう、というのは意味のない投資行動のように感じます。ここに対する感覚は人それぞれなのでしょうか。
世界中の株式や債券に投資するようなバランス型投信の場合、リバランスもおこなってくれます。「1本でまとめて投資できる」「リバランスをしてもらえる」というメリットがあります。
参考 : セゾン投信の評価と評判 ほったらかし国際分散投資の魅力
しかし、「国内の株式と債券だけに投資する」「基準価額が一定水準に達したら安定的な運用に切り替える」というファンドには付加価値があまり感じられないというのが正直なところです。
商品内容を説明した動画では、お客の声のようなかたちで、ファンド選びに困っている投資家層の悩みを紹介しています。その悩みとは、以下のようなものです。
- 種類が多く内容が難しいため、ファンド選びができない
- ある程度の利益がでたら、その後はリスクを抑えたい
- 売るタイミングの判断はむずかしそう
- 毎日マーケットをチェックするのは無理
このような悩みを抱えた顧客が多いのかはわかりません。しかし仮に多いとしても、「野村ターゲットプライス 日経225」を作る積極的な理由にはならないように思います。
ファンド選びができないなら、投資の基本やファンド内容がわかるように資料を用意したり説明をしたりすれば良いのではないでしょうか。もちろん顧客の成長はすぐにはならないかもしれませんが、一定の効果はあるでしょう。
またリスク許容度はそれぞれ違うのだから、絶対額を基準に安定運用に切り替えるファンドを一様にすすめるというのは感心できません。
証券会社というのは、ある意味、情報を持っている側が、持っていない側へおこなうビジネスです。そのため、顧客に情報を持たない初心者が多いほうが、証券会社は利益をあげやすくなります。
顧客がずっと初心者であり続けることが、証券会社の望みなのかもしれません。ぼくたち投資家は、情報を持たないことで損をしないように、知識と経験を積んでいかなくてはならないのでしょう。
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