エラン(6099)のIPO情報 業績・リスク・成長性についての私見
東証マザーズに11月7日(金)に上場する予定の「エラン(6099)」について、ビジネスモデルや直近の業績、財政状態などを調べました。エランのIPO申込み、上場後の投資を狙っている場合は参考にしてください。
エランのIPO情報
現在ブックビルディングによる募集・売出期間中です。仮条件は1,620~1,750円で、期間は24日(金)まで。公募価格の決定は27日(月)です。
主幹事証券会社は野村證券であり、引受けの割合は約80%とのこと。2014年7月に株式分割がおこなわれたあとの発行済株式総数は300万株でしたが、今回の募集分50万株をふくめると上場時には350万株になります。
売出しの株数は51万7000株、オーバーアロットメントは15万2500株、募集分とあわせて合計116万9500株が今回のIPOででまわる株数です。
ビジネスモデル
エランのビジネスモデル、事業内容について目論見書に詳細が記載されています。以下は「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」からの抜粋です。
※ 目論見書は取引のある証券会社に請求できます。
当社は病院に入院される方や、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、グループホーム、ケアハウス等の介護施設(以下「介護老人保健施設等」という)に入所される方たちに対して、衣類、タオル類の洗濯サービス付きレンタルと日常生活用品の提供を組み合わせたサービス「CS(ケア・サポート)セット」(以下、「CSセット」という)を展開しております(介護医療関連事業)。
出典 : 新株式発行並びに株式売出届出目論見書 p14 事業の内容
病院に入院している人、介護老人保健施設などに入所している人向けに、衣類やタオル類のレンタルと洗濯サービスをセットで提供し、さらに日常生活用品の販売もおこなっているようです。
患者さんや入所者さんが手ぶらで入院・入所することができたり、家族の洗濯の手間や品物の購入などの負担が軽減されたり、病院や施設の職員さんの業務効率化につながったりするというメリットがあります。
事業にかかわる人物や業者などはおもに「エラン」「利用者(患者等)」「病院・施設等」「リネンサプライ業者等」です。
リネンサプライ業者等というのは、病院や施設と契約して布団やシーツ、枕、枕カバーなどのリネン製品を供給している事業者のことです。エランはすでに業務をおこなっているリネン業者などと提携して、同社の事業をおこなっています。
本社は松本にあり、支店は現在、相模原、金沢、名古屋、広島、大阪、高松、福岡、札幌にあります。公式サイトのエリアイメージを見るかぎりでは、東北5県以外はカバーできているようです。
エランの事業の根幹をなす「CSセット」を導入する病院や施設などは2013年12月期現在で406であり、今後の高齢化とそれにともなう施設数の増加が期待できるマーケット環境を考えると、成長性は高いかもしれません。
業績と財務状態
2013年12月期は売上高およそ60億円(前年同期比プラス30.9%)、当期純利益およそ2億4800万円(同プラス34.2%)です。2014年12月期は6月の第2四半期時点で売上高およそ35億円、当期純利益およそ1億1700万円です。
2013年12月期現在の現金(現金と現金同等物)はおよそ5億8800万円。営業キャッシュフローは順調に稼げており、投資キャッシュフローの使い道も支店の開設費用などで適切、財務キャッシュフローも特筆することはありません。
現在の成長性、ビジネスモデルが継続される場合、キャッシュは順調に積みあがりそうです。
ただし、ほかのブログ等で注目されている自己資本利益率(ROE)の高さについては注意が必要です。2013年12月期のROEは35.9%であり高い数値ですが、自己資本比率が35.7%と低い水準です。
自己資本だけでなく総資本をつかっての利益率、つまり総資産利益率(ROA)を目論見書記載の純資産額・当期純利益から計算すると、およそ12.37%です。
ROAが12.37%というのは高い数値ですが、競合が現在ほとんど存在しないものの参入障壁は低いと考えられること、事業エリア拡大にともなう利益率の低下の可能性があることを考慮すると、手放しで褒められる点ではないと思います。
また目論見書記載の1株あたり純資産額270.10円(2013年12月期)、1株あたり当期純利益金額82.60円、仮条件の下限である1,620円から計算すると、PBRおよそ6.0倍、PERおよそ19.61倍です。
現状の成長性を考えると割安と考えられなくもないですが、今後の業績悪化のリスクも織り込むとすこし割高なような気もします。
事業のリスク
あまり割安でないので精査はしていませんが、エランの事業において重要な位置をしめる「リネンサプライ業者等」と今後あらわれるであろう「競合他社」が気になります。
ビジネスモデルのところでも言及したように、エランのビジネスモデルは基本的に、もともとその病院や施設などにシーツや枕カバーなどを供給しているリネンサプライ業者などと、提携することにより成りたっています。
既存の業者と提携するのだから、いわば取引先であるリネンサプライ業者などとの良好な関係維持は大事です。
実際、市場シェアの高いリネンサプライ業者との取引割合が現状では高いようなので、仮にその事業者との関係に亀裂が生じた場合は、売上の大きな部分が毀損するおそれがあります。
また、可能性は高くないかもしれませんが、リネンサプライ業者などが提携をうちきり、自社でエランの事業内容を追加でおこない、取って代わられるということも考えられます。
医療保険や介護保険の制度、エランとリネンサプライ業社などとの契約内容を考えるとそうなる可能性は低いかもしれませんが、なんらかのかたちでシェアを奪われる可能性はあるのではないでしょうか。
競合他社は現在は数社しか確認できておらず、エランのように全国展開を目指しているところはないと考えられている状況も、いつどのように変化するかわかりません。
エランへの投資に関する情報のまとめ
以上のことから、今回のエランのIPOについての情報をまとめると以下のようになります。
- IPO銘柄としては成長性はそこまで高くない
- 提携しているリネンサプライ業者などがリスク要因になりえる
- 参入障壁が低いため競合他社があらわれる可能性がある
- 取引先との関係悪化による急激な業績悪化の可能性がある
- 株価は当面の業績を考えると割高かもしれない
どれもあたり前のことでエランにかぎったことではないですが、前述したリスクや業績に関するコメントもあわせて参考にしてください。個人的にはあまり良い投資先ではないと判断しました。
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